1995年のWRC(世界ラリー選手権)において、トヨタのセリカが規定違反により失格となった事件は、モータースポーツファンの間で今なお語り継がれています。この事件は、リストリクターの構造に不正な細工を施し、エンジン出力を大幅に引き上げたことが発覚したことに起因します。リストリクターの原理は、エンジンに供給される空気量を制限することで、公平性と安全性を保つための重要な部品です。しかし、トヨタはこのリストリクターに手を加え、セリカのエンジンが他の競技車両よりも高い出力を発揮できるようにしていました。この不正行為により、トヨタは1995年の全ポイントを剥奪され、翌年のWRC参加を1年間禁止されるという厳しい処分を受けました。本記事では、このセリカWRC失格事件の詳細とリストリクターの構造、さらにその後のトヨタの対応やカローラWRCへの移行について詳しく解説します。
ポイント
- セリカがWRCで失格となった原因と具体的な規定違反の内容
- リストリクターの構造とその原理
- 1995年のラリー・カタルーニャでの車検で発覚した不正の詳細
- トヨタがセリカからカローラWRCへの移行を決めた背景と経緯
セリカがWRCで失格に至った背景
- WRCでセリカが起こした事件
- リストリクターの原理
- ST205のリストリクター
WRCでセリカが起こした事件
1995年のWRC(世界ラリー選手権)において、トヨタのセリカが規定違反を犯し、大きな問題となりました。この事件は、エンジンの吸気量を制限するリストリクターに不正な細工を施していたことが発覚したものです。
WRCでは、エンジンの出力を制限し、競技の安全性と公平性を保つために、リストリクターと呼ばれる部品を使用することが義務付けられています。トヨタはこのリストリクターに不正な加工を施し、規定以上の空気をエンジンに取り込むことができるようにしていました。これにより、セリカのエンジン出力が他の車両よりも高くなり、不正なアドバンテージを得ていたのです。
事件の発端は、1995年のラリー・カタルーニャでの車検です。トヨタ・セリカのリストリクターがレース中にスライドし、規定よりも多くの空気をエンジンに供給していたことが判明しました。この不正が発覚した結果、トヨタは1995年のWRC全てのポイントを剥奪され、翌年のWRCへの参加を1年間禁止されました。これはWRC史上でも極めて厳しい処分となり、トヨタの信頼を大きく損ねる結果となりました。
リストリクターの原理
リストリクターはエンジンに供給される空気の量を制限するための部品であり、モータースポーツにおいてエンジン出力を調整するために使用されます。
エンジンは燃料を燃やすことで動力を得ていますが、その燃焼には空気が必要です。リストリクターは吸気口の大きさを制限することで、エンジンが取り込む空気の量を減らし、エンジン出力を抑制します。これにより、エンジンの過度な高回転化を防ぎ、車両の速度を一定範囲内に保つことができます。
例えば、NASCARやWRCなどのレースでは、エンジン出力を制限するためにリストリクタープレートを使用しています。このプレートは、吸気口に設置される小さな管や板で、エンジンに入る空気の量を減らします。リストリクターを使うことで、レースに参加する全ての車両が同じ条件で競技を行うことができ、ドライバーの技術や戦略がより重要な要素となります。
また、リストリクターを設置することにより、エンジンの過度なチューニングを防ぎ、レースのコストを抑えることができるというメリットもあります。これにより、レース参加者間の公平性を確保し、競技の健全性を維持することができるのです。
ST205のリストリクター
ST205セリカに搭載されたリストリクターは、エンジンに供給される空気量を制限することで、出力を抑制するための重要な部品です。
モータースポーツでは、エンジンの性能を均一に保ち、公平な競技を行うためにリストリクターが使用されます。リストリクターは、エンジンの吸気口に取り付けられ、空気の流量を制限する役割を果たします。これにより、過度なエンジン出力を防ぎ、安全性を確保することができます。
ST205セリカに使用されたリストリクターは、通常よりも小さな径のパイプやプレートを吸気口に取り付けることで、空気の流入量を制限しました。これにより、エンジンの最大出力を抑えることができました。しかし、トヨタはこのリストリクターに不正な加工を施し、走行中にスライドして空気の流入量を増やす仕組みを作り上げました。これにより、エンジン出力を大幅に増加させることができたのです。
このように、リストリクターはエンジン出力を制御するために重要な役割を果たしていますが、不正な操作によってその効果を無効にすることが可能です。これが、ST205セリカにおけるリストリクターの問題点でした。
セリカがWRCで失格した後の変化
- トヨタのラリー専用車
- カローラをWRCへ移行
- WRCからスバルが追放されたと言われる背景
- ラリーカーのエンジン
トヨタのラリー専用車
トヨタのラリー専用車は、特別に設計・製造され、世界ラリー選手権(WRC)などのレースに対応するための高性能な車両です。
ラリー専用車は、市販車をベースにしているものの、過酷なラリー競技に耐えるための数々の改造が施されています。これにより、通常の市販車では得られない性能や耐久性を実現しています。
代表的なトヨタのラリー専用車には、セリカ GT-FOURやカローラWRCが含まれます。これらの車両は、エンジンやサスペンション、ボディ構造などが強化されており、どのような路面状況でも高い走行性能を発揮します。また、トヨタは近年、ヤリスWRCを投入し、最新の技術を駆使したラリーカーを提供しています。これにより、トヨタはWRCで数々の優勝を収めてきました。これらの専用車両は、トヨタのエンジニアリング技術とモータースポーツへの情熱を象徴しています。
カローラをWRCへ移行
トヨタは、セリカGT-FOURの後継としてカローラWRCを導入し、ラリー活動を継続しました。
1997年に導入されたワールドラリーカー(WRカー)規定に対応するため、トヨタはより小型で軽量なカローラを選び、ラリー仕様に改造しました。これにより、セリカに比べてより高い競技性能を発揮できるようになりました。
カローラWRCは、セリカGT-FOURで使用されていた3S-GTEエンジンを引き継ぎつつ、ボディサイズをコンパクトにしてラリー特有の狭く曲がりくねった道でも優れた操縦性を発揮しました。1997年のラリー・フィンランドでデビューし、翌1998年にはモンテカルロで初勝利を収めるなど、トヨタに多くの成功をもたらしました。この移行により、トヨタはWRCにおいて再び競争力を高めることができました。
WRCからスバルが追放されたと言われる背景
スバルがWRCから追放されたと言われる背景には、WRCの新しいレギュレーションと欧州メーカー優遇の風潮があります。
WRCは2010年から新しい規定を導入し、Super2000規格に基づく車両のみが参戦できるようにしました。これにより、従来のグループNで参戦していたスバルやスズキは新しい規定に適応するための大幅な車両改造や新車開発を強いられました。
具スバルはこれまでのグループN規格の車両で競技を続けていましたが、新しい規定に適応するためには、多額の投資を伴う新しい車両の開発が必要でした。しかし、欧州メーカーはすでにSuper2000規格の車両を保有しており、新規定への移行は比較的容易でした。このため、スバルにとっては不利な状況となり、結果的に撤退を余儀なくされました。この状況から、スバルがWRCから追放されたと感じる人々が多いのです。
ラリーカーのエンジン
ラリーカーのエンジンは高性能で耐久性が高く、厳しい競技条件に対応できるように設計されています。
ラリー競技では、多様な路面条件や気象状況に対応するため、エンジンに求められる性能が非常に高いです。これに加えて、長時間にわたる激しい運転に耐えるための耐久性も必要です。
例えば、トヨタのラリーカーには3S-GTEエンジンが搭載されており、このエンジンはターボチャージャーを備えており、高出力とトルクを実現しています。また、エンジン冷却システムや強化された内部部品により、高温・高圧下でも安定した性能を発揮します。さらに、エンジンは頻繁なメンテナンスや修理がしやすいように設計されており、競技中のトラブル対応も迅速に行えるようになっています。このように、ラリーカーのエンジンは競技に特化した特別な設計がなされているのです。
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セリカがWRCで失格に至った影響
- 1995年のWRCでトヨタのセリカが規定違反を犯した
- エンジンの吸気量を制限するリストリクターに不正な細工が施された
- リストリクターとはエンジンに供給される空気の量を制限する部品である
- 規定違反の内容はリストリクターがスライドし、規定以上の空気を取り込むようにしたこと
- これによりセリカのエンジン出力が他の車両よりも高くなった
- 事件の発端は1995年のラリー・カタルーニャでの車検である
- トヨタは1995年のWRC全てのポイントを剥奪された
- トヨタは1996年のWRC参加を1年間禁止された
- 事件はWRC史上でも極めて厳しい処分となった
- トヨタの信頼は大きく損なわれた
- リストリクターは吸気口の大きさを制限することでエンジン出力を抑える
- リストリクターはNASCARやWRCなどのレースで使用されている
- ST205セリカに搭載されたリストリクターも同様の役割を果たしていた
- トヨタはリストリクターに不正な加工を施し、出力を増加させた
- セリカの規定違反はエンジン出力を規定以上に引き上げたことによる